PR
ある日、賃貸の部屋の更新の時期に、大家さんから通知が届きました。
「共益費を2,000円上げます」
お願いではありませんでした。もう決まったことのように、「上げます」と書いてありました。
私は、紙に「お断りします」とだけ書いて、送り返しました。そのあと電話が何度もかかってきましたが、出ませんでした。
結果は、どうなったか。大家さんのほうから、前と同じ条件で続けるという書類が届いて、値上げはなくなりました。
この記事では、家賃や共益費の値上げの通知が来たときに、どう考えればいいかを書きます。私の体験と、法律の決まりの両方から書きます。
先に結論:値上げは、まず断っていい
最初に答えを書いておきます。
家賃や共益費の値上げの通知が来ても、納得できなければ、まず断っていいです。値上げは、大家さんと借りる側の話し合いで決まるものだからです。
ただし、断れば必ず今の値段のまま住める、というわけではありません。大家さんには、家賃が相場とずれたときに値上げを求める権利もあります。話がこじれたら、調停や裁判になることもあります。
このあたりの決まりも、あとでくわしく書きます。
私が値上げを断った話
まず、私の体験です。
更新の時期に、「上げます」という通知
通知が来たのは、片道40分のところに住んでいたときでした。更新の時期です。
送ってきたのは大家さんです。その物件は、大家さんが管理会社も兼ねているところでした。
書いてあったのは、共益費を月2,000円上げるということ。理由の説明はほとんどなく、「値上げしました」という書き方でした。
既成事実のような書き方が嫌だった
私が引っかかったのは、金額よりも書き方でした。
「どうしてもお願いします」と頼まれたのなら、考えたと思います。でも、紙切れ1枚で、もう決まったことのように2,000円上げてくる。 この既成事実のような書き方が、好きではありませんでした。
月2,000円は、配当で作るなら80万円分
「たかが2,000円」と思うかもしれません。実際、妻にもそう言われました。

月2,000円くらいなら、払ってもいい気がするんですが……

配当で作るなら80万円分の資産です。紙1枚で上げられる額としては、小さくありません。
でも、月2,000円は1年で24,000円です。これを、利回り3%の配当で毎年受け取ろうとすると、80万円分の資産が必要になります。税金を考えると、100万円近くです。
紙1枚で上げられる2,000円は、80万円の資産に相当する。 そう考えると、黙って受け入れる気にはなれませんでした。
共益費や物価のリスクは、オーナーが負うもの
もう1つ、私の考えがあります。
共益費や物価が上がるリスクは、本来、部屋を貸して商売をしているオーナーの側が引き受けるものです。借りる側は、決まった値段で部屋を借りる約束をしています。そのリスクを、通知1枚でこちらに回してくるのは筋が違う、と思いました。
「お断りします」とだけ書いて送り返した
だから、送り返した紙には「お断りします」としか書きませんでした。理由も、長い説明も書いていません。
そのあと、電話が結構かかってきました。1〜2か月のあいだに、6回くらいです。私は出ませんでした。
電話に出なかった理由
電話に出なかったのには、理由が2つあります。

大家さんから電話が来たら、出ないとまずいですよね?

出なくても大丈夫です。出るなら、その場で返事をせず「書面でお願いします」と伝えれば十分です。
1つは、電話だと、言いくるめられそうだったからです。相手は、こういう話に慣れています。電話で話しているうちに、「まあ、2,000円なら」と流されてしまうかもしれません。
もう1つは、紙で記録に残したかったからです。紙なら、何を伝えたかがはっきり残ります。あとで話がこじれたときにも、自分が何と答えたかを示せます。
なお、その物件には更新料がありました。更新料は、契約のとおりに払っています。断ったのは、契約になかった値上げだけです。
妻とは、けんかになった
この件で、妻とはけんかになりました。
「月2,000円くらい、もういいやないか」
妻はそう言いました。2,000円のために揉めるくらいなら払えばいい、という考え方も、よく分かります。
けんかが収まったのは、大家さんから書類が届いたときです。前の契約と同じ条件で続ける、という内容でした。
法律には、更新のときに話がまとまらなければ、前の契約と同じ条件で更新されたことになる、という決まりがあります。大家さんの側も、その決まりに沿って書類を送ってきたのだと思います。
値上げを断ったあとも、大家さんとの関係が悪くなることはありませんでした。
揉めるのが怖い人へ
「大家さんと揉めるのが怖い」という人もいると思います。

大家さんに断ったら、追い出されたりしませんか?

値上げを断っただけでは、大家さんは簡単に更新を断れません。こじれたら188や法テラスに相談しましょう。
私が聞きたいのは、これです。自分のお金と、揉める1回分と、どっちが大事ですか。
大家さんや管理会社にとって、値上げの通知や、その返事のやりとりは、ふだんの仕事の一部です。こちらが断ったからといって、大きな揉めごとだとは思っていないはずです。
価格の交渉は、社会ではふつうのことです。
教員の仕事では、値段を交渉する場面がほとんどありません。だから、断ることや交渉することが、実際以上に怖く感じるのだと思います。でも、会社どうしの取引では、値段の交渉は毎日のように起きています。値上げを断るのも、その1つにすぎません。
親しい先生には、私は「値段の交渉くらい普通やで」とはっきり言います。そこまで親しくない人には、「そうだよね。好きにしたらいいと思うよ」と言います。お金をどう使うかは、最後は本人が決めることだからです。
もちろん、それでも揉めたくないなら、受け入れるのも1つの選択です。ただ、怖いからという理由だけで、毎月のお金を手放さないでほしいと思います。
私は、いまの部屋でもし値上げの通知が来たら、また断ります。
値上げについての法律の決まり
ここからは、法律の決まりです。借地借家法という法律に書かれています。2026年9月23日に、e-Govで条文を確認しました。
話がまとまらなければ、前と同じ条件で更新される(26条)
期間が決まっている賃貸の契約では、期間が終わる1年前から6か月前までに、大家さんが「更新しない」「条件を変えないなら更新しない」と伝えていなければ、前の契約と同じ条件で更新したものとみなされます。
これを「法定更新」といいます。私の場合も、この決まりに沿って、前と同じ条件で続くことになりました。
ただし、法定更新のあとは、契約の期間が「定めのないもの」に変わります。
値上げを断っただけでは、簡単に更新を断れない(28条)
大家さんが更新を断るには、「正当の事由」が必要です。大家さんと借りる側がそれぞれその建物をどれくらい必要としているか、これまでの経緯、建物の状態などを合わせて判断されます。
値上げを断ったことだけを理由に、大家さんが簡単に更新を断ることはできません。
大家さんには、値上げを求める権利もある(32条)
一方で、大家さんにも権利があります。
税金が上がった、物価などの経済の事情が変わった、近くの似た部屋と比べて家賃が安すぎる。こうした理由で家賃が見合わなくなったときは、大家さんは、これから先の家賃の値上げを求めることができます。
話し合いがまとまらなければ、借りる側は、裁判で決まるまで「相当と認める額」を払っていればいいことになっています。ただし、裁判で値上げが認められると、足りなかった分に年1割の利息をつけて払うことになります。
また、家賃の値上げで裁判をする前には、まず調停(裁判所で話し合う手続き)をすることになっています。
つまり、「断れば必ず今の値段で住める」わけではありません。 大家さんがきちんとした理由で値上げを求め、調停や裁判まで進めば、値上げが認められることもあります。
共益費は、契約書と話し合いで決まる
私の場合は、家賃ではなく共益費でした。
共益費は、階段や廊下の電気代、掃除の費用などに充てるお金です。国土交通省の賃貸住宅標準契約書(契約書のひな形)では、こうした費用が増えて見合わなくなったときに、「協議の上」改定できるとされています。
共益費も、大家さんが一方的に決めるものではなく、契約書の決まりと話し合いで決まるのが基本です。まずは、自分の契約書に何と書いてあるかを確かめてください。
通知は、更新の時期に来やすい
私のところに通知が来たのも、更新の時期でした。値上げの話は、契約を更新するタイミングで持ち出されることが多いと思います。
26条で見たとおり、大家さんが条件を変えたいなら、期間が終わる1年前から6か月前までに伝える必要があります。更新の1年ほど前になったら、契約書を出して、更新の時期と改定の決まりを一度読んでおく。 それだけで、通知が来たときに慌てずに済みます。
教員は、年度の切り替わりや異動の時期と重なると、書類を読む余裕がなくなりがちです。更新の時期は、カレンダーに入れておくと安心です。
値上げの通知が来たら、やること
最後に、通知が来たときの動き方をまとめます。
1. 契約書を読む
まず、自分の契約書を出して、家賃や共益費の改定について何と書いてあるかを確かめます。多くの契約書には、「協議の上、改定できる」といった決まりがあります。
2. 受け入れるかどうかを決める
値上げを受け入れてもいいのは、どんなときか。私の基準は、これです。
相手からのお願いを、受けてもいいかなと思えたとき。
きちんと理由を説明されて、丁寧にお願いされたなら、受け入れることもあると思います。紙1枚で「上げました」と言われて、納得できないなら、断っていい。
3. 断るなら、紙で伝える
断るなら、紙に書いて伝えます。私は「お断りします」とだけ書きました。
口で言うより、紙に残しておくほうが、あとで「言った・言わない」になりません。
私は「お断りします」の一言だけでしたが、少し丁寧に書くなら、次のくらいで十分です。
〇年〇月〇日付でいただいた共益費の改定のお知らせについて、改定には同意いたしかねます。これまでどおりの条件での契約の継続をお願いいたします。
これに、日付、部屋番号、自分の名前を書き添えます。長い理由や、感情的な言葉はいりません。「同意しない」ということが、はっきり伝わればいいのです。
送る前に、紙の写真を撮るか、コピーを取っておきます。 郵便で送るなら、送った記録が残る方法を選んでおくと安心です。あとで「受け取っていない」と言われても、送ったことを示せます。
電話がかかってきても、出なくてかまいません。どうしても出るなら、その場で返事をせず、「書面でお願いします」と伝えれば十分です。
4. こじれたら、相談する
大家さんが調停の話を出してきたり、話がこじれたりしたら、一人で抱えずに相談してください。
- 消費者ホットライン「188」:近くの消費生活センターにつながります
- 法テラス:家賃の値上げについての相談先や、手続きの流れを案内してくれます
※電話番号や受付時間は変わることがあります。公式サイトで確かめてから連絡してください。
値下げの交渉は、したことがない
ちなみに、住んでいる部屋の家賃の値下げを交渉したことは、私はありません。
理由は、最初から相場より安い部屋を選んでいるからです。安い部屋に住んでいれば、値下げを求める理由がありません。
法律上は、借りる側にも、家賃が相場より高すぎるときに値下げを求める権利があります(32条)。ただ、あとから交渉するより、最初に安い部屋を選ぶほうが、ずっと簡単です。
まとめ:納得できない値上げは、まず断っていい
家賃や共益費の値上げについて、まとめます。
- 値上げは、大家さんと借りる側の話し合いで決まる。納得できなければ、まず断っていい
- 更新のときに話がまとまらなければ、前と同じ条件で更新される(法定更新)
- 値上げを断っただけでは、大家さんは簡単に更新を断れない
- ただし、大家さんにも値上げを求める権利がある。こじれたら188や法テラスに相談
- 月2,000円は、配当で作るなら80万円分の資産。小さな額ではない
私は、紙1枚で断りました。大家さんとの関係も、悪くなっていません。黙って受け入れれば、上がった分はずっと続きます。納得できないなら、まず断ってみてください。
家賃のほかに、どの順番で固定費を見直せばいいかは、教員の固定費の見直し方にまとめています。
noteのサブスクで、質問し放題にしています
記事は私の状況で書いているので、読んだあとに「うちの学校だと、どうなんだろう」で止まってしまうことがあると思います。そこを直接聞ける場所を作りました。
- Chatworkで質問し放題(回数の制限はありません)
- 基本はその日のうちに、遅くても2営業日以内に必ず返します
- 画面を見ながら相談できるZoom会が月1〜2回(基本、顔出しなし)
- AI・働き方・転職・副業・お金・人間関係、どれでも構いません
つくねの相談室/月780円。自分で判断できるようになったら、解約してください。