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「教員は、どれだけ働いても残業代が出ない」
よく聞く話です。そして、半分しか合っていません。
正確に言うと、残業代が出ないのは公立の教員です。私立は、出る学校があります。私は私立で働いていますが、残業代が出る学校は実際にあります。
この違いは、根拠になっている法律が違うことから来ています。ここを知らないまま「教員だから残業代はない」と思い込んでいる人が、公立にも私立にもいます。
この記事では、なぜ公立には残業代が出ないのか、その代わりに出ている教職調整額はいくらなのか、私立はどうなっているのかを書きます。そして最後に、調整額が10%に上がっても現場は変わらないと私が考えている理由を書きます。

教員に残業代が出ないのは給特法があるからです
根拠になっているのは、給特法という法律です。正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といいます。
長い名前ですが、最初の3文字がすべてです。「公立の」と書いてあります。
この法律では、公立学校の教員には時間外勤務手当と休日勤務手当を支給しないと決まっています。代わりに、給料月額に一定の割合を上乗せした教職調整額が支払われます。
私がこの仕組みを知ったのは、22歳のころでした。制度として知ったときの感想は、正直に言えば「そういうものか」でした。入る前に説明されることは、ほとんどありません。
教員の教職調整額は4%から10%に上がっていきます
その教職調整額が、いま動いています。
2025年6月に給特法の改正法が成立し、教職調整額の水準を4%から、令和12年度までに10%へ段階的に引き上げることが決まりました。文部科学省の改正法の概要に書かれています。
数字だけ見れば、2.5倍です。大きく見えます。
ただ、現場の受け止めはそうではありません。私の周りの空気を、そのまま言葉にするとこうなります。
> なけなしの金額で、残業代を出した気にならないでください。
きつい言い方ですが、これが実感です。理由は次で書きます。
教員の調整額は労働時間で割ると割に合いません
調整額が割に合っているかどうかは、時間で割ってみれば分かります。
労働時間だけで考えるなら、割に合っていません。給料月額の数%という金額に対して、実際に学校に残っている時間は、その比率に収まりません。
分かりやすいのが部活動の手当です。
土日に部活の指導をすると手当が出ます。ただ、その日の拘束時間で割ると、時給500円くらいにしかなりません。最低賃金を大きく下回る水準です。
これは制度の欠陥というより、そもそも時間で買っていないからです。給特法は「教員の仕事は時間で測りにくい」という前提でできています。その前提を採るかぎり、時間で割った瞬間に割に合わなくなります。
同僚がどう受け止めているかも書いておきます。もう慣れています。受け入れています。怒っている人は、思ったより少ないです。
私立教員に給特法は適用されません
ここからが本題です。
給特法は公立が対象です。私立には適用されません。
私立学校の教職員に適用されるのは、普通の会社と同じ労働基準法です。労働基準法では、法定の労働時間を超えて働かせた場合、割増賃金を支払う義務があります。
つまり、私立は残業代が出る建てつけになっています。実際、出る学校は出ます。
ただし私立なら必ず出る、という話ではありません
正直に書きます。私立でも出ない学校はあります。
「みなし残業として基本給に含んでいる」「一定額の手当で処理している」といった形をとっている学校があるからです。学校によって違うというのが実態です。
だから私立を受ける人に伝えたいのは、これです。募集要項と就業規則で、時間外の扱いを確認してください。 給料の額面より、ここのほうが働き方に効きます。
公立と私立で条件がどう違うかは、教員の年収は割に合うのかにも手取りの実額まで書きました。あわせて読んでみてください。
教員の残業には月45時間の上限が示されています
残業代とは別に、時間の上限も決められています。
文部科学省の指針では、時間外在校等時間の上限は1か月45時間、1年360時間とされています。臨時的な特別の事情がある場合でも、1か月100時間未満、1年720時間以内が上限です。
公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドラインに示されています。
ここで注意したいのは、決まったのは「働く時間の上限」であって、「仕事の量」ではないということです。上限が示されても、業務が減るわけではありません。
現場で起きたのは、「帰りや」と言われるようになったことと、出退勤が記録されるようになったことです。業務量は、ほとんど変わっていません。
教員に残業代が出ても、働き方は変わらないと思います
最後に、私の考えを書きます。
「調整額ではなく、ちゃんと残業代を出せばいい」という意見があります。気持ちは分かります。ただ、実際にそうなったら何が起きるかを考えると、私は前向きになれません。
起きるのは、たぶんこうです。
無駄な残業が、次々と申請されるようになります。 そして、生産性は変わらないまま、財政だけが逼迫します。
残業代が出る仕組みは、「長く残った人が報われる」仕組みでもあります。いま学校に足りていないのは、時間を積む理由ではありません。時間を減らす理由のほうです。
だから私は、残業代の議論に期待していません。制度が変わるのを待つより、自分の働き方を変えるほうが早いと思っています。
これから教員になる人が、給料で知っておくべきこと
給料の仕組みで、一つだけ知っておいてほしいことがあります。
社会保障を払っているので、手取りは思ったより少ないです。
額面の給料を見て就職を決めると、最初の給与明細で驚きます。共済の掛金、税金、そういったものが引かれた残りが、実際に使えるお金です。
そして、ここが大事です。だからこそ、自分で備えないといけません。
引かれている分は、無駄になっているわけではありません。医療も年金も、その掛金で成り立っています。中身は教員の共済のすべてにまとめました。
そのうえで、引かれた後の手取りをどう使うかは、自分で決めるしかありません。残業代が出ないことを嘆いても、手取りは1円も増えません。増やす方法を考えるほうが早いです。
まとめ 教員の残業代は公立と私立で扱いが違う
- 残業代が出ないのは公立。根拠は給特法(正式名称に「公立の」と入っている)
- 代わりに出るのが教職調整額。2025年の改正で4%から令和12年度までに10%へ段階的に引き上げ
- ただし時間で割ると割に合わない。部活の手当は時給500円くらい
- 私立には給特法が適用されない。労働基準法なので、残業代が出る建てつけ
- ただし私立でも出ない学校はある。募集要項と就業規則で確認する
- 時間外の上限は月45時間・年360時間。決まったのは時間の上限であって、仕事の量ではない
- 残業代が出るようになっても、無駄な残業が増えるだけだと私は思っている
制度が変わるのを待つより、自分の働き方を変えるほうが早いです。この記事で書きたかったことは、結局そこに戻ります。
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